空白の


案外容易かった。
思い続けていたあの多くの気持ちや、不安や、同空間にいた際の居心地の悪さ、全てを一瞬で軽いものにしてしまうくらいきっと、そんなふうに思われた、そんな気がする。

人には見えない人の気持ちがあり、苦労も悲嘆も何も伝わらないあの空間で溢れた涙は多分、言葉の何倍も、

あの時話せた言葉流した涙が、きっと私の全てであり、伝えたかったことであり、私のこの何年も過ごしてきた日々を、過程を。やっと報われたみたいな、なんというか、伝わった、みたいなそんな気持ちがあったのは、ただその流れに任せた勢いに合わせたみたいなそんなものではない。

繕って言った交わしたかっただけという言葉は偽りで、重ねた思いは様々な後悔と、涙と、私の人生の苦しみを撫でた。それがただ一瞬でも。それがただ終わりまで為されなくても。だから私は、きっとこれで終わりなのだと思った。いや、これが終わりなのだ、と思った。私たちの、私の、適切な終わりなのだ。正解なのだ。

人の大切な想いを壊してはいけない。そんな一瞬で。でも私はその一瞬に意味を込めた。それが例え伝わっていなくても、私の節目には相応しかったと思いたい。