Pauli.Ef

パウリ効果
…ある人が機器に近づくと、その機器が不可解な壊れ方をするという効果のこと。



これは物理学界における古典的ジョークなんですけどね。ある人が、機械に近づいた時にその機会が突然壊れたんですって。物理学者のヴォルフガング・パウリが提唱したもの。迷信みたいなもの。だけど、これは私の、私が貴方に近づいたら、貴方が徐々に壊れていってしまうのと、同じようなことだと思うんです。

私たちの関係は、この現象みたいに、怪奇的で、懐疑的。貴方は私に近づいたら自分が壊れてしまうことを知っていながら私から離れようとしない。その理論が私たちの愛の摂理を証明していると言うのにね。

迷信だし、こんな馬鹿げた現象に私たちの愛を証明させるなんて、笑っちゃうわ。知ってしまった摂理を噛み締めながら、臆しながら、おののきながら、私と営む夜に。今日も貴方は壊れていく。罪に狂った私も。最期には、それが、全て溢れ出て、誰にも止められない。

報われない。報われたい。私は艶めいていて、儚いから、貴方は進むことを辞められない、とどまれない。丁寧に抱いてちょうだいね。私も、壊れやすいのだから。

孤独の栓を抜いたかのように、貴方は私を連れ出す。飢えを隠して、騙しながら、私は単純で簡単な女みたいに振る舞うの。でも、これも全部、戦略。私は、愛して欲しいだけ。愛情が欲しいだけ。

図々しい私の愛の摂理。私を、私たらしめる全てを、避けて、欲しいものだけに手を伸ばしても、それだけが届かない。霞んでいく。微睡む中でも消えない灯火に、私は依存して縋って、真夜中の安全圏で欲を満たすの。

報われない。報われたい。私は艶めいていて、儚いから、貴方は進むことを辞められないでしょう。丁寧に抱いてちょうだいね。私も、壊れやすいのだから。



「本当に欲しいものだけに、私は手を伸ばせない。私が、壊してしまうから。」